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「なんていうかさ。…雷って慣れないよな」
御剣はリモコンに手を伸ばし、DVDの音量を上げている。
「キミは相変わらず雷が苦手だな」
「苦手っていうかさ…不気味だろ。落ちたらイヤだしさ…」
カウチソファーの背もたれに寄り掛かれば、また空が割れる。
咄嗟に拳を作り、声を飲み込んだ。
「成歩堂」
横からは、何故か嬉しそうな恋人の声。
「怖ければ、手を握っていてもいいのだよ」
「…お前なあ」
軽く睨んで、肩を揺らす彼の手を、素早くつかまえる。
じわりと伝わる彼の温度。
抗議するように強く握ってやれば、負けじと握り返すところが憎らしい。
「この程度の雨ならば、すぐにおさまるだろう」
「そうかな?」
「うム。だから安心したまえ」
それはきまって嵐の夜。
繋がる僕の手と
お前の手。
「やっぱり、慣れないや」
雷より大きな胸の高鳴りに
僕はまた、驚くんだ。
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