笑顔
冷たい冬の手が頬を撫で、私はゆっくりと、空を仰いだ。 楽しげに微笑む彼を見ながら、私は思う。
果てしなく広がる闇の隙間から、舞い落ちる白い雪。
「…美しいものだな」
傍らの男は、ぽかんと口をあけている。
「うん、綺麗だな」
「クリスマスの夜に雪か。なんともロマンティックなものだ」
不意に、首元に巻かれたマフラー。
横を見やれば、でもね御剣、と笑うキミの顔が見える。
「ぼくは早く帰って、あったかい部屋でお前とおでんが食べたいや」
「キミらしい感想だ。わたしはワインがいい」
「いや、おでんだろう。ワインじゃ腹は膨れないよ」
「クリスマスにおでんはどうかと思うのだがね」
「じゃあ、ちょっと豪華にすき焼きにする?」
わたしは笑った。
こんなに近くにいても、わたしとキミは見ているものが違う。
この聖なる夜にキミはおでんを
わたしはキミを想いながら、空を見上げる。
(だが、不思議なものだ)
首元から伝わる、彼の優しい温もり。
吐かれた吐息は、白く大気に溶けていく。
「いこっか」
成歩堂の声に、小さく頷き返した。
(キミが笑うのなら、…その違いも、愛しいのだよ)
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